JAG理事の辻井 啓伺が、塚本晋也監督の映画『ネルソンさん、あなたは人を殺しましたか?』にスタントコーディネーターとして参加しました。本作は第83回ベネチア国際映画祭(ヴェネツィア国際映画祭)でレオンチーノ・ドーロ賞(金の小獅子賞)を受賞しています。
「アクション」と聞くと、殴り合いや立ち廻りなどの格闘シーンを思い浮かべる方が多いかもしれません。けれども、スタントの専門家が活躍するのは格闘シーンだけではありません。戦争映画のように、人が撃たれて倒れる、爆風に飛ばされる、斜面を転げ落ちる――そうした場面の一つひとつにも、アクションの技術と安全管理が欠かせないのです。
作品について
『ネルソンさん、あなたは人を殺しましたか?』は、ベトナム戦争に従軍したアメリカ海兵隊員アレン・ネルソンの実体験と証言をもとにした作品です。戦地での体験と、帰国後に抱え続けた心の傷に向き合う姿が描かれます。
- 監督:塚本晋也
- 出演:ロドニー・ヒックス、ジェフリー・ラッシュ、リリー・フランキー ほか
- 劇場公開日:2026年9月11日
- 配給:キノフィルムズ
- 上映時間:116分
- スタントコーディネーター:辻井 啓伺
ベネチア国際映画祭で受賞
本作は第83回ベネチア国際映画祭のコンペティション部門に出品され、2026年9月11日(現地時間)、レオンチーノ・ドーロ賞(金の小獅子賞)を受賞しました。日本作品がこの賞を受賞するのは初めてです。
- 第83回ベネチア国際映画祭 レオンチーノ・ドーロ賞(金の小獅子賞)受賞
- 第83回ベネチア国際映画祭 コンペティション部門 出品
- 2026年トロント国際映画祭 スペシャル・プレゼンテーション部門 出品
戦争映画で求められるスタントの仕事
戦争映画のアクションは、格闘シーンのように技の切れや迫力を「見せる」ものとは限りません。むしろ観客に戦場の現実を伝えるために、倒れ方ひとつにもリアリティが求められます。
- 撃たれる・倒れる:被弾の瞬間の体の反応や、崩れ落ちる倒れ方を、演じる人が安全に繰り返せる形に組み立てる
- 爆発・爆風:火薬や特殊効果のタイミングと、人が飛ばされる・伏せる動きを合わせる
- 転落・転倒:ぬかるみや斜面、塹壕など、足場の悪い場所での動きを安全に成立させる
- 大人数の場面:俳優やエキストラ一人ひとりの動きと立ち位置を決め、事故が起きない段取りをつくる
こうした場面では、マットやパッドをどこに置くか、何度リハーサルをするか、カメラの位置からどう見えるかまでを計算し、俳優とスタッフ全員が安心して本番に臨める状態をつくります。スタントコーディネーターは、リアルに見せることと、誰もけがをしないことを同時に成り立たせる役割を担っています。
塚本監督はインタビューで、反戦を掲げる作品として「殺し合いをエンタメにしてはいけない」と語っています(WWDJAPAN)。派手さではなく現実の重さを伝える――そうした作品でこそ、アクションの専門家の技術が静かに生きてきます。
辻井 啓伺について
1981年にジャパンアクションクラブへ入団。ワイルド スタント チーム、スーパー アクション メガシステム(SAM)の設立に参加し、2001年にスタント チーム ゴクウを設立しました。三池崇史監督の『クローズZERO』シリーズやNHK大河ドラマなど、数多くの作品でアクションコーディネーターを務めています。
JAGアクションクリエーター養成所では、アドバンス講義でアクションシーンの演出、ワイヤーワークやスタントの現場保全、馬術、殺陣などを指導しています。
「倒れる」も、立派なアクション
アクションの技術は、格闘シーンのためだけのものではありません。戦争映画、時代劇、事故や災害を描くドラマなど、人の体が危険にさらされる場面には、必ずアクションの専門家が関わっています。安全に倒れる、安全に転がる――その基礎があってこそ、作品のリアリティが生まれます。
JAGアクションクリエーター養成所では、第一線で活躍する理事たちから、こうした現場の技術と安全管理を基礎から学べます。

